
外国人を採用した場合の就業規則や社内規則は、どのような点に注意して作成する必要があるのでしょうか?
経営者が10人以上の労働者を雇用する場合、労働基準監督署に就業規則を届け出なければなりません。それは、外国人を雇用した場合でも同様です。
日本人を雇用した場合でも、就業規則や社内規則を作成するのは難しく、多くの人が雛型の社名、社長名を自社に充てたもので届け出をしてしまうことも多いでしょう。
今回は、そんな就業規則、社内規則について考えてみます。
就業規則は労働基準監督署に届け出なければならない
常時10人以上雇用する場合は、労働基準監督署に「就業規則」を届け出なければなりません。この届け出を怠ると30万円以下の罰金刑が科せられることがあります。
これは外国人を雇用した場合でも適用されます。また、外国人をアルバイトなどで雇用した場合でも、常時アルバイトとして10人以上雇用した場合は、就業規則の届け出を行う必要があるため、注意が必要です。
正社員ではなくアルバイトだからということで就業規則を届け出ないということは違法になります。
就業規則に記載する内容
就業規則は、会社の数だけ存在すると言っても過言ではありません。
経営者と社員、アルバイトとの雇用に関する約束事ですので、雇い入れ時にきちんと説明する必要があります。
しかし、就業規則を作成する経営者側が就業規則について詳しくなければうまく説明することができません。
就業規則には必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」と制度を実施する場合記載しなければならない「相対的記載事項」、記載するのが自由な「任意的記載事項」に分けられます。
まず、記載しなければならない「絶対的記載事項」についてです。
始業、終業時間、休憩時間や、休日休暇など勤務時間や休日について記載しなければなりません。また、工場などの二交代などについても記載しなければなりません。
これは労働基準法の労働時間や休憩時間など、法律に準拠している必要があります。
次に賃金の計算方法など賃金についての記載も必要です。始業、就業時刻以外に労働を行う場合、時間外勤務の割り増し賃金についても記載する必要があります。
最後に退職に関する事項です。ここでは解雇の事由なども記載する必要があります。
解雇については、明確な理由がなければ認められるものではないため、一般的な項目を記載する形となります。
次に「相対的記載事項」についてです。
ここでは退職金やボーナスなどの賃金以外の制度がある場合は記載を行います。
災害補償などの労災についてもここに記載して、賞罰などの表彰や懲戒などがある場合もここに記載します。
いずれにしても届け出だけをすませるのであれば、「絶対的記載事項」のみでも構いません。
しかし、雇用をしていく中で様々な制度が必要となっていきます。そのため、「相対的記載事項」も記載し届け出を行う必要があります。
自社に就業規則がある場合、まずは翻訳を
就業規則は、外国でも労働契約書のような形で存在するため、日本独自のものではありません。
もともと就業規則があり、外国人労働者を受け入れる場合、外国人労働者にも内容を理解してもらう必要があります。
そのためには、今ある就業規則を外国人向けに翻訳をしましょう。
フィリピン人の場合はタガログ語が母国語ですが、英語を教育されているため、英語への翻訳することで内容を正しく理解できます。
日本に来る外国人労働者は、母国で日本語を習ってくるので、翻訳することは必要ないと考える人もいるかと思います。
しかし、重要な労働契約に関する内容が記載されている就業規則です。母国での教育で日本語を100%理解できていればその必要はありませんが、多くの外国人は日本語を自在に使えるというわけではありません。
就業規則の説明で誤解が発生してしまう可能性があります。
外国人の就業規則に関するトラブル例
では、どのような場合に外国人労働者と就業規則に関してトラブルになることが多いのでしょうか?
海外では労働契約は文書によって明記されていることが多いです。そのため、日本のように就職の際に特に新卒で入社した場合、就業規則の読み合わせなどを行うことが殆どありません。
これは、会社と労働者との労働契約が極めて曖昧であるため、労働者がするべきことがはっきりと記されていないためにこうしたことが起こります。
海外では、労働契約書を会社が発行し、内容確認の上でサインをすることで労働契約が成り立ちます。そのため、日本人のように就業規則をはっきりと説明しないまま雇用すると、入社時には説明がない等の理由で要求を拒否される可能性もあります。
また、入社時の合意した労働条件に対して、業績などを理由に変更する場合は、反感を持たれやすいです。これは日本人を雇用する場合でも同じことが言えますが、外国人労働者を雇用する場合、他に条件が良いところがあれば、引継ぎや次の人材が入るのを待たずに次の職場に転職してしまうこともあり、とても厄介です。
こうしたトラブルの原因は、入社時にきちんと就業規則の説明を行われなかったことに終始すると言っても過言ではないでしょう。
外国人であっても、会社のルールでもある就業規則を説明すれば理解し、その規則を守る様に働いてくれます。また、就業規則は労働基準法にも適合している内容であり、「労働者を守る」側面もあります。これに違反する働き方を会社が要求した場合、労働者からも規則と違うということができます。
外国人労働者にも就業規則を理解させることで、会社側からは労働基準法も守っている会社であると、入社時のアピールすることができます。
外国人労働者にも就業規則の表彰などの項目を有効に利用する
就業規則の相対的記載事項に「賞罰」の中に表彰があります。
外国人労働者は、日本に来て一生懸命に働きます。
そんな彼らは裸一貫で母国から来て、多くは母国へ生活費を送るために働いています。
決して日本人にも負けない労働精神を持っています。多くの売り上げを達成した、精勤したなどの理由で表彰をするというのも、就業規則を使った外国人労働者のモチベーションアップの方法となります。
こういうことをしたら、会社が表彰をするということを明文化すれば、外国人労働者のモチベーションにもつながります。
外国人労働者にも、働いていることに感謝されているということに気付いてもらいましょう。
文化の違いというけれど
日本の就業規則は海外の労働契約と比較すると、明文化されていないルールが多く、外国人が戸惑うことが多いと言われています。
それに伴って、就業規則をあまり気にしたことのない経営者と労働契約を重要視する外国人労働者とのトラブルが多く、文化の違いということでよくあるトラブルということでひとくくりとされています。
しかし、日本でも転職により会社が変わる人が増えてきたことから、就業規則や労働契約に関して日本人でもトラブルになることが増えてきました。
今までの労働契約が海外と比較してなあなあでやり過ぎていたという事ができます。
こうしたトラブルが外国人労働者を雇用する場合の問題ではなくなってきていることが現状です。
これからは、外国人労働者がいるからという理由だけでなく、就業規則のきちんとした説明が必要となってくるものと思われます。
これは文化の違いということではなく、今までの日本が海外と比べて特殊だったということを認識するべきです。
これからは、外国人労働者のみならず日本人に対しても就業規則の説明が重要となってきます。
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