外国人技能実習制度への介護職種の追加について解説

外国人技能実習制度と言えば、工場でのライン作業や農業漁業などの業種で行われていると思い浮かべる人も多いと思います。

近年、法改正により介護職にも外国人技能実習制度が適用できることはご存知でしょうか?交代制の24時間勤務の仕事ともなる介護職に外国人技能実習生が来れば、心強い従業員となることは予想できます。

今回は、外国人技能実習制度が介護職へ新たに適用されたことについてです。

外国人技能実習制度の改正について

昨年平成28年11月に外国人技能実習制度を規定する法律である「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)が改正されました。

主な内容としては、不正利用する監理団体や受け入れ企業排除を目的とした規制強化となりますが、同時に介護職種への外国人技能実習生の受け入れ許可も盛り込まれております。

これにより外国人技能実習生が介護職での受け入れも可能となりました。まだ始まって一年未満の制度となりますので、まだまだ試験的な試みと言えます。

介護職への技能実習生の受け入れは他業種より厳しい基準

介護職は工場での作業や、農作業などと比べて大きな違いがあります。それは人を相手にするということです。単純にマニュアルに沿ったやり方で行えば済むような場面は少なく、間違えば、介護作業中に死亡事故なども起きてしまいます。

また、介護される人との信頼関係なども、仕事をしていく上で重要な要素となります。

そのため、日本語コミュニケーション能力の基準が他の業種と比較しても厳しくなっております。

介護職で受け入れ一年目は、日本語能力検定でN3程度が望ましいとされていますが、2年目からはN3が要件となります。

その他にも様々な他の業種にない基準があります。

訪問介護への技能実習生の受け入れは禁止

技能実習生の受け入れが可能な企業は、基本的には介護施設となります。

ヘルパーなどの派遣をおこなっている訪問介護への技能実習生の受け入れは禁止されています。

これは、日本人であっても移動時間が勤務時間にならない、勤務実態がつかめないため、長時間労働などの違法労働があっても見過ごされてしまうためです。

また、介護施設であっても、設立後3年以上たっている経営が安定した機関への派遣などきちんとした施設運営を行っているところに限られています。

日本人との処遇の差がないか

法改正前は、外国人技能実習生への低賃金労働が問題となっておりました。

他への転職等が事実上できない外国人技能実習生はそこで働くことを余儀なくされてしまいます。

そのため経営者のいいように使われてしまい、低賃金、長時間労働となることが多くなってしまいました。

外国人技能実習生を受け入れる際には、賃金規定の届け出が義務付けられます。

届け出だけで支払いの実態がなければ元も子もありませんので、定期的なヒアリングや立ち入り検査なども実施されるよう規定されています。

これは他の業種でも共通した改正です。

受け入れ体制について

受け入れを行う施設にも、技能実習生の指導者や、技能実習計画などといった一連の受け入れ体制を記載した届け出書類を提出する必要があります。

受け入れを行うに当たっては、介護福祉士の実務経験となる施設であることも重要な要素となっております。

こうなると、外国人技能実習生が介護職として働くことができる施設は、設備の整った大規模施設という傾向にあることが分かります。

小規模でやっている訪問介護サービスなどへは、受け入れ審査時点で許可が下りない形となります。

外国人技能実習生が介護職への適用となった背景

外国人技能実習生が介護職でも受け入れ可能となったのは、突然なったというわけではありません。今までも介護職として外国人が働くことができていました。

インドネシア、フィリピン、ベトナムと日本が加盟しているEPA(経済連携協定)により、外国人技能実習生の介護職適用以前から、介護という在留資格で就労は可能でした。

これはEPAによるものですので、インドネシア、フィリピン、ベトナムの三か国からの就労となります。

この介護という在留資格は4年の実務経験を積んで、日本の介護福祉士の資格に合格しなければなりませんでした。

さらに、母国での日本語能力や介護に関する学校を卒業している等、日本に来る前にも様々な厳しい基準が設けられています。

それにもかかわらず、日本語での試験は、海外の人にとって想像以上の難関でした。

せっかく母国での厳しい基準をクリアしても、日本での介護福祉士資格に合格できないために帰国を余儀なくされてしまう事例が続出しました。

この介護の在留資格は、介護福祉士に合格すれば、日本の永住権がもらえるものなのですが、それは本人だけで家族は日本で永住することができません。

自分が介護福祉士として働いて、母国にいる家族を呼び寄せたくても、呼ぶことができません。

この介護の在留資格は、制度が始まった当初は介護の人手不足を外国人労働者がカバーするものとして非常に注目されましたが、現在ではその制度に無理がある等の理由からあまり積極的に活用されておりません。

介護の現場は人手不足。外国人技能実習生が人手不足解消の切り札になるか?

他の業種では積極的に受け入れられている外国人技能実習生は、貴重な労働力として多くの業種で頼りにされています。

今回、新たに介護職も追加された背景には、やはり介護現場の人手不足があります。

一度人手不足解消を目的に外国人労働者を受け入れた介護現場ですが、その難易度の高さと制度の欠陥により、人手不足解消とまではいきませんでした。

今回、この介護の在留資格よりも緩和された形で、外国人技能実習生が介護現場で受け入れられようとしております。

外国人技能実習生が活躍し、介護の人手不足解消となるのか、それとも基準が厳しすぎて現状と変わらないのかは、まだまだ制度が始まったばかりで、これから結果が出てくると言えます。

介護の品質低下を招いてはいけない

介護の現場が人手不足だからと言って、優しい基準で多くの外国人技能実習生が受け入れられた場合、介護現場でのモラル低下などに代表される介護の品質低下を招く恐れがあります。

外国人技能実習生を派遣する側も受け入れる側も、人を増やしてただ人手不足を解消すればよいという問題ではないことはよく理解できていると思います。

なかなか一筋縄ではいかない介護の人手不足問題ですが、他の業種での評価が高い外国人技能実習生が活躍してくれることを願います。

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