外国人労働者を介護で受け入れるメリットと問題点の現状

外国人技能実習制度により、多くの業種で外国人労働者が働いています。

外国人技能実習生が受け入れられる業種も年々改正を重ね、増加傾向にあります。その中で、介護職においても外国人技能実習制度が適用することができることになりました。

これは平成29年11月の法改正で追加になったため、まだまだ適用されて間もない業種とも言えます。

介護職で外国人労働者を受け入れることについて、メリットや問題点はどのようなものがあるのでしょうか?

介護職の人手不足は深刻

団塊世代が高齢化することで介護施設や介護職の需要は今後も増え続けています。しかし、少子化により、介護職の担い手が今後さらに不足すると言われています。

また、介護職自体が夜勤などもあり、非常にハードな仕事であると言われ、他の業種でも人手不足が言われている中、敢えて介護職を選ぶ人も少なくなっています。

そのため、日本人だけでの求人では、人が集まらないという事態に陥っています。

今後、さらに団塊世代よりも下の世代が高齢化し、介護職の需要が増え続けるため、人手は不足する一方です。

こうした状況において、外国人技能実習制度の前段として始まった外国人労働者の受け入れがEPAによる介護職の適用でした。

EPA(経済連携協定)による外国人労働者の介護職受け入れ

EPAを締結している日本とベトナム、インドネシア、フィリピンから介護職としての外国人労働者の受け入れは平成20年度から始まっています。

その中で、各国の外国人が日本の介護福祉士を目指して、母国での厳しい基準に合格した人だけが日本での労働が許可されるものでした。

介護福祉士に合格すれば、日本での永住権も取得することができる非常に労働者に有利な制度となっておりました。

しかし、その基準の高さが非常に問題となった制度でもありました。

外国人でありながらも介護職は入所者とのコミュニケーションがとても重要となることから、日本語能力の高さを求めることも大変な問題となりました。

日本語学校で、日本語を学んだとはいえ、ネイティブレベルに日本語をマスターできるのであれば、他の仕事に行くなど、敢えてハードな仕事として言われている仕事にはなかなか志望しません。

また、ハードな仕事をつづけながら、日本語と介護福祉士の勉強もしなければなりません。

介護福祉士に合格しなければ帰国しなければならず、途中で脱落してしまうような人も多くいました。

外国人技能実習制度による外国人受け入れの基準は少し緩い

EPAによる外国人労働者の受け入れでは、その厳しすぎる基準ゆえに人が集まらず、人手不足の状況があまり変わりませんでした。

そのため、現場サイドでは外国人技能実習制度による外国人労働者の受け入れを熱望する声も上がるようになります。

しかし、介護施設ではコミュニケーション不足が入所者の人命にも関わることから、簡単に制度を適用し受け入れを行っていいものなのかということが議論されておりました。

その結果、外国人技能実習制度の他の業種よりも少し厳しく、EPAによる介護職の受け入れよりは緩い中間をとるような基準で介護職への外国人技能実習制度の適用が行われることになりました。

介護職の外国人技能実習生には日本語能力検定を受ける必要がある

外国人技能実習生を介護職で受け入れる場合、入所者とコミュニケーションを取らなければなりません。その場合必要なのが日本語能力です。

実習生は一定基準の日本語能力検定を受けて合格している必要があります。

また、母国で介護に関する業種に就いた経験のある人のみが介護職への技能実習生として日本で働くことができます。さらに母国の公的機関などの推薦がなければ技能実習生としての受け入れを受けることができません。

他の業種と比較して、厳しい基準が設けられています。しかし、最長5年の期限付き実習であり、永住権も取得できるEPAによるものと比較すると条件が緩和されています。

監理団体や受け入れ施設などにも基準が設けられている

実習生の受け入れを行う介護施設や監理団体にも基準が設けられています。

介護職が人手不足だからと言ってどんな施設にも外国人技能実習生を受け入れられるかと言われればそうではありません。

介護施設を持たない訪問系介護には外国人技能実習生の受け入れは認められていません。

設備が整っていた介護施設でなければ実習生の受け入れは行えないということになります。

また、実習生は日本の介護を学びに来ているため、介護施設側で技能実習指導員の選任を必要とします。実習生が多くなれば、その人数に応じた指導員の人数を確保しなければなりません。その中で一人は介護福祉士でなければなりません。

それだけではなく、介護施設に実習生を派遣する監理団体にも五年以上の実務経験を有する介護福祉士がいなければなりません。

監理団体は毎年の実績により審査され、優良要件を満たしていなければ、監理団体資格の取り消しなども行われてしまう厳しいものです。

介護施設では、日本語と介護に関する基礎講習などの講習も行わなければならないのも他の業種の技能実習生の受け入れと異なる部分となりますので他の業種よりも、実習を行っているという要素が強いと言えます。

介護施設で外国人労働者を受け入れるメリット

介護職で外国人労働者を受け入れる場合、技能実習生も受け入れる側の介護施設も、また監理団体も他の業種とは異なった厳しい基準で受け入れを行われます。そのため、派遣されてくる外国人労働者もレベルが高く、責任感も強い人が来る可能性が高いと言えます。

介護職で働こうとした場合、過去に母国で介護に関する仕事をしていなければならず、未経験者が来るという事がなくなります。

他の国であっても介護職経験者が派遣されてくるということは大きなメリットと言えるでしょう。

日本語能力も母国で推薦をもらうためにある程度習得する必要があり、日本語が全く理解できない人が来るという心配も少なくなります。

基準を高くしたため、まともな人が派遣される確率が高くなると言えます。

メリットも多いが、介護施設での受け入れる負担も増える

介護施設で外国人労働者を受け入れる場合、介護福祉士による技能実習指導員を選定し届け出なければなりません。

また、日本語の講習や介護に関する講習なども一定時間以上行わなければなりません。

これらは本来の技能実習という制度の目的からみれば行うことが当然と思われますが、多忙な日常業務の傍ら行わなければならないため、外部講師などへの委託となる可能性が高く、費用負担が増えてしまいます。

介護施設では、夜勤を行うことも多く、その合間に講習も行うため、実習生や指導員の介護福祉士にもこうした実習制度の必須項目をこなしていけるのかという心配もあります。

これだけの基準と実習計画をこなせる介護施設がどれだけあるのか?

介護施設や監理団体にも厳しい基準を課している技能実習制度ですが、この基準をすべて満たし、技能実習指導員なども専属でつけることができるような施設は大型の施設しかないものと考えられます。

技能実習生も厳しい基準を通過した優秀な人が介護職として派遣され、監理団体や介護施設も実習生向けに講習を行ったり、指導員がいたりと、上手く回れば、介護施設と実習生双方にプラスとなる制度となりうるものですが、これだけの準備ができる介護施設が全国にどれだけあるのかということになります。

人手は欲しいけど、外国人労働者を受け入れると負担が増えてしまうから、今まで通り日本人だけで対応しようと決めてしまう介護施設も出てくるのではと考えられます。

介護の現場は人命にも関わるものが多い

厚生労働省が介護職への外国員技能実習生の派遣にこれだけの基準を設けているのは、介護には間違うと人命にかかわることが多いためです。

いい加減な基準で外国人労働者だけを増やせば、介護施設での死亡事故が相次ぎ、それもまた社会問題となってしまいます。

これだけの基準を設けてもなお外国人労働者の活用を検討している介護の現場では、それだけ人手不足が深刻化していると言えます。

これからの10年後にも安心して施設運営を行えているよう、外国人労働者の受け入れを検討してみてはいかがでしょうか?

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